インターネットの進化は、広告をどう変えるか|Brandsight by Ogilvy 2006年秋号

勝手に文字起こし=デジタル化 する自身のインタビューシリーズの第7弾は、デジタルマーケティングカンパニーNeo@Ogilvyが2006年4月から日広との合弁で日本法人を創めた  https://katou.jp/?eid=591  経緯でOgilvy Japanの広報誌「Brandsight」06年秋号にNeoスザンナ・ツイさん(APAC Regional MD)と僕で行った対談です。

グループとして経営思想、戦術、業績がシンクロ奏功しだし、申告所得の伸び (キャリア公式、検索結果、消費者金融、出会い系.、投資リターンetc) が同業でも屈指 https://katou.jp/?eid=5043 となっていた背景からの、Ogilvyからの強いオファーでした。
04年頃までのインターネットは100%米国産といっていい状況… そこにアジアが台頭がみえてきていました。
日広は上場や合併、被買収など多様な機会・提示に恵まれるさなか…そこに90年代には『世界で最も尊敬されている』アドバタイジングエージェンシーと称されていたOgilvyからのオファーでした。『 先ずは合弁から 』という踏み出しになり。
 
05年、ニューヨークそしてシンガポールでのOgilvy首脳とのやりとりのなかで、広告会社としての理想的成長や、日広メンバーや僕自身の近未来を考えての合弁会社の出発でしたが、このインタビューの頃(06年の初夏)にはすでライブドア事件からのネット系総崩れが顕在しており、心中は混沌のなかでした。 読み返すと心境が蘇り…気恥ずかしさがありますねぇ。
 
インターネットがビジネスを変えた
加藤:スザンナさんがいらっしゃるシンガポールは素晴らしい国ですね。もう10回以上行ってるんですけど、まずシーフードがおいしい。そして天候がいい。何より安全なのがいいですね。
 
ツイ:確かに気候はいいんですけど、いつも変わりばえしないんですよね(笑)。その点、日本は季節の変化があって刺激的です。最近、日本に来ることが多いんですが、マーケットがとてもエキサイティングだと感じています。
 
加藤: こと広告マーケットということになると、ご存じのように、日本は極めて特殊なんです。日広がスタートしたのは92年なんですが、それまで日本の広告業界には、私たちのような小さな会社が存在できる余地はなかった。なぜ90年代になってからそれが可能になったかというと、インターネットが登場し、ネット広告というものが出てきたからです。もっとも、私が会社を始めた頃は、インターネットは海のものとも山のものともわかりませんでした。しかし今では、ネット広告市場はかなり巨大になっています。96年に16億円だった市場規模が、現在では3000億円弱にまで拡大している。しかも、これはメディア・ベースの費用の総計であって、クリエイティブなどの費用は含まれていない。実体の経済の規模ということになると、この倍近い数字になるのではないかと、私は考えています。
 
ツイ:ネット広告は世界中ですさまじい勢いで進化し、拡大していますね。10年前、ネット広告の主流はバナー広告でした。現在ではブロードバンドのインフラも普及して、いろいろな新しい広告手法が試みられています。アジアは、インターネットが最も盛んな地域のひとつです。日本は元来テクノロジーに強い国ですから、今後もアジアのネット広告ビジネスやデジタル・マーケティングを牽引していくのではないでしょうか。
 
加藤:ええ、おっしゃるとおりです。そして、インターネットの重要性が高まるにしたがって、国内の広告業界の構図も大きく変化していくでしょう。広告ビジネスには、メディア、広告会社、広告主の3者が関わっているわけですが、日本ではこれまでメディアの数が圧倒的に少なかった。そのため、メディアのスペースを抑えられるのは、非常に力のある一部の広告会社だけだった。企業は、いわばそれを分けてもらっていた。そういう構図が、実に50年間続いてきたんです。そこに、どかーんとインターネットが登場し、メディアの枠が無限に広がった。いきなり超メディアの時代になったんです。それによって、広告ビジネスの環境も劇的に変化し、広告会社の仕事のあり方そのものが問われるようになった。これまで日本では、総合広告会社と呼ばれるひと握りの巨大な会社だけが大きな仕事をしてきました。それが今、大きく変わりつつあるんです。
 
ツイ:洞察に満ちた話だと思いますね。欧米では、メディア・バイイングの会社とクリエイティブ・プランニングの会社がはっきり分かれています。そのために、いろいろな会社が広告ビジネスに携わることができます。日本の広告界の構図は、韓国に似ていますね。あの国でも、クリエイティブ・エージェンシーやメディア・プランニングの会社がひとつの系列に束ねられていますから。
ブランドと消費者の関係はどう変わるか
  ツイ:インターネットによって、広告そのものの次元も大きく変わっていると思います。これまで広告主は、自社の商品やサービスの価値を、メディアを通じてマスに伝え、消費者もそのメッセージを一方的受け取っていました。しかし、インターネットはその関係を大きく変えたのです。消費者は、商品の情報を自分で調べ、自分で選ぶようになりました。どのブランドとどのような関係をもつかを決めるのは、消費者自身になりました。つまり、ネットはユーザーに「パワー」を与えたのです。真剣にブランディングに取り組んでいる企業は、メディアの使い方を変えなければならないと本気になって考えていますよね。
 
加藤:従来だと、起業が生活者にメッセージを伝えていく場合、メディア・ビークルの濃く置くスペースを利用するのがふつうだったわけですよね。ところが、ネットがあらわれて、起業と生活者との最も重要な接点は、新聞やテレビではなく、自社のウェブ・サイトになってしまった。新製品の情報も、イベントの告知も、問い合わせの受け付けも、すべてウェブ・サイトでできちゃうようになった。これが、インターネットがもたらしたマーケティングの最大の革命だと私は思っています。では、マス・メディアは否定さるべきかといえば、もちろんそうではない。トリガーとしての役割という点では、マス・メディアはまだまだ有効です。しかし、マス・メディアでは最も言いたいことだけをシンプルに言うという形に変わってきている。で、興味があればウェブ・サイトに来てください、そうすればもっともっといろいろな情報が見れますよ、という展開になる。これはネット以前にはなかった、まったく新しいコミュニケーションの形です。
 
ツイ:消費者が広告に接する環境も大きく変わっていますね。かつて、消費者は自宅やオフィスや通勤途中に広告に接していました。しかし現在では、携帯電話やipodといったデジタル・ツールが普及して、広告はあらゆるところに存在できるようになりました。それによって、例えば夜中の2時にクラブで遊んでいる若者とコミュニケーションをとるということが可能になってきたのです。英語に「relevance(適切性、妥当性)」という言葉があるのですが、それが今後のマーケティングのキーワードになっていくと私は考えています。これまでのマーケターは、ターゲットに関する推測ばかりに時間を費やしていました。これからのマーケティング・コミュニケーションは、もっとスマートにならなければなりません。デジタル・ツールを通じて、より適切なタイミングで、より適切なメッセージを送る。それが可能になりつつあるのです。
 
誠実なマーケティングが求められる
加藤:コミュニケーションということでいうと、有史以来最も平等な社会が来ていると私はおもうんです。誰もが、ウェブというコミュニケーション・チャネルを通じて、自分の意見を言うことができるようになり、起業と生活者の関係もフラットになりました。それによって、企業側は正直でなければならなくなったし、何よりも、間違ったターゲットに商品を売ってはいけなくなった。おっしゃるように、まさに「適切性」の問題なんです。どんな商品にも買ってもらいたいターゲットがあります。で、そのターゲット以外の人が買うと、やっぱり不満が発生するんですよ。「なんでこんなに高いんだ」とか「こんな機能はいらないよ」とかね。広告に載せられてついつい買ってしまった、ということがこれまではあった。これからはそういう大雑把な売り方はできない。なぜなら、生活者が「ものを言う」ようになったからです。不満があると、ブログや掲示板にすぐに書いてしまう。だからごまかしは効かない。誠実なマーケティングというものが、ものすごく大切になっている時代だと思いますね。
 
ツイ:広告のアカウンタビリティというものが求められていますよね。広告のメッセージに対して責任を取らなければならないと考える広告主は、確実に増えています。ネオ@オグルヴィはそういう意識の高いクライアントにも満足していただけるサービスを提供できなければならない、と思うんです。ポイントは、デジタルの可能性を最大限にいかした包括的なアプローチです。戦略、メディア、クリエイティブ、分析、その4つをひとつのサービスとして提供する。それが、ほかのデジタル系マーケティング会社との大きな違いです。将来的に、既存メディアの70パーセントがデジタル化し、メディアの融合も進んでいくと言われています。当然、メッセージの伝達の方法も大きく変わっていくでしょう。そこでネオ@オグルヴィが果たせる役割は非常に大きいと考えています。