インターネットと広告の新潮流 |宣伝会議 2005年4月号

勝手に文字起こし=デジタル化 する自身のインタビューシリーズの第五弾は、前回に続き広告業界の老舗業界誌『宣伝会議』2005年4月号(50周年記念号)に掲載された加藤のコメントからなる記事の再掲します。
同誌には何度か小生のコメントなどを掲載して頂きましたが、同号の特集『ライブドア・フジテレビも描いていない、ネットとテレビの近未来』においては、再前付にて「 インターネットと広告の新潮流 」なるタイトルにてフィーチャーされました。
  以下に全文を手打ちしますので是非そのままぜひお読みいただければ、と思うのですが、
  実はこの特集の冒頭にて、僕を取りあげて頂いたことが契機となり、翌年4月に開業した合弁会社ネオ・アット・オグルヴィ株式会社(51% Ogilvy One/49% 日広)の設立に繋がりました。この年、打合せや契約のために2度ニューヨークにも行ったのですが、道すがらの機内にて …広告人が「宣伝会議」にて大きく取り上げられることの影響力を強く感じたことを鮮明に覚えています。 https://katou.jp/?eid=591
 
  ついでにもひとつ余談ですが…このキャッチーなタイトルは、のちの2007年2月にC NETにてADKインタラクティブの横山隆治さんと週替わり連載コラムをやろう!という企画が持ち上がったときに、そのまま使っちゃいました(笑) 1回目→  https://japan.cnet.com/article/20343993/
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インターネットと広告の新潮流

マスメディアとインターネットを組み合わせた広告が急増する中、果たしてインターネット広告の定義とは何なのか。販売手数料ビジネスの誕生や表現の多様化、ブログの普及などネットを取り巻く環境は大きく変化している。
 
=マスメディア×ネットの普及=
「これまでの、インターネット広告の目的は生活者に直接購買を誘因するほか、『お近くのショールームへ』『店頭でご覧ください』など商品を知ってもらう機会を生み出すアプローチ的意味合いが強かった。ところが現在、あらゆるメディアメッセージの目的は、詳しい商品情報を提供するWEBサイトへ繋ぐことに変化しつつある」と日広代表取締役社長の加藤順彦氏は語る。    ( 以下「」は加藤氏コメント)
 一昨年電通が M× I (MassMedia × Internet)という考え方を発表したように、今後マスメディアとインターネットを組み合わせた広告は急増するだろう。一方で、ショートフィルムなどコンテンツそのものが広告となるブランデッドエンターテインメントも新しいコミュニケーション手法として話題になった。
 時間を気にせず、表現枠に捉われない顧客との重要な接触の場ーーインターネットが、メディアとして、店舗そのものとして、ブランドメッセージの場として発達を遂げた。それぞれの既存メディア自体が大きな変革期を迎える中、どこまでをインターネット広告と定義するかは広告界にとって大きな課題だ。すべてのメディアの誘導は、WEBへと向かい、消費者から評価されるかどうかを勝負するコミュニケーションデザインの時代へと移りつつある。
 
=インターネットのTV化=
加藤氏が特に注目しているのは、コミュニケーション型のナビゲートコンテンツ。
インタラクティビティがネットの特徴として最も面白い要素ですから、消費者に選択肢を与えながらガイドツアー的に楽しませながら進行する表現が増えてくると思います。しかもターゲット別にいろいろと手法を変えて。広告主がWEB制作に費用をかける傾向が顕著になったことで、TVや映画、CM制作会社の参入も相次いでいます。その結果、表現能力は大幅にアップし、視聴者側もブロードバンド環境で見ることが当たり前になったことも含めて、TVコンテンツとWEBコンテンツの境目がなくなってきています
また、広告そのものがコンテンツとなっているブランデッドエンターテインメントの登場も見逃せない。昨今ではBMWのショートフィルムなどがこれに当たる。
 
=個人のメディア化=
もう一つの注目はブログに代表される個人のメディア化だ。マスメディアでは表現者の数に比べて受信者の数が圧倒的に多かったが、インターネットの登場により、誰もが発信者になる権利を得た。将来的にはメディアと個人の差異は権威だけになることも考えられる。ブログの最大の特徴はトラックバック機能とクローラーに引っかかることだが、これにより関心の高い記事を掲載すれば個人メディアでも二字曲線的にトラフィックが増える可能性が生まれた。
つまり情報発信元が数種のメディアのみであったこれまでとは異なり、既存メディアの情報と一般人の発信する生きた情報が並列で集客力を持ちうる環境なのである。その中で、個人メディアの発達に上手く組み込んだ成果報酬型の広告手法は健在である。また、個人メディアの発信者である生活者リーダーに企業がどのように接点を持ち関わっていくかも注目されている点だ。
 
=広告の目的に販売手数料が加わった==
「インターネット広告は、ブランディング(アド)・販促(SP)・販売手数料ビジネス(コミッション)という3つの目的に分けることができます」  これまでのアド・SPという目的に販売手数料ビジネスが加わったことが、ネット広告を複雑化している。
販売手数料を得ることそのものを広告の目的とするビジネスとは、商品情報コンテンツ(比較サイトやショッピングモール)へ集客し、そこで発生した販売高に応じた手数料を商品提供社から得るという流通機能的な役割を意味する。
ネット起業で高い知名度を持つのがYahoo!と楽天だが、これらは個人情報を自社のストックとして捉え、そこにさまざまな商品やサービスをマッチングし、消費を発生させ手数料を得ている。同じようなビジネスモデルに挑む企業は数多く存在している。そこに広告主、インターネット専業広告代理店、媒体社のいずれもが進出していることに注目したい。では、今後さらにどうなるのか。
「大手ポータルサイトや、インターネット専業広告代理店は大半が手数料ビジネスに力を入れ始めています。そして個人情報を持つ企業か否かで、ビジネスモデル分類を明確にすることができます」
 
=インターネットと広告の関係=
インターネット環境の進化、生活者のライフスタイルの変化が、広告の「枠」の大きさや見え方ではなく、「枠」を飛び越えたコミュニケーションデザインを必要としている。広告提供構造が複雑化した理由も、「枠」や「立ち位置」を飛び越えて、魅力的な消費接点を生み出すことにあるといえよう。
Ⓒ 宣伝会議 2005. 4