多様な見方や価値観示す |IT社長は新聞を読んでいる(2009年 日本新聞協会 新聞週間

勝手に文字起こし=デジタル化 する自身のインタビューシリーズの第六弾は、シンガポールに引っ越して直ぐリーマンショックがあって、数カ月経った頃(取材:2009年2月)に声が掛かった「IT社長は新聞を読んでいる」という、日本新聞協会による連続インタビュー企画に参加したときのもの。確かに東京で日広やってた頃は16年ずーっと朝は日経、産経と、日経流通→日経産業、を読むのが日課でしたが、声をかけて貰い→ 慌てて配達をお願いしたことを覚えています。笑

2020年4月にポッドキャスティングの”ヤング日経”にゲストで呼ばれた際も喋った https://voicy.jp/channel/874/76688  んですけど、新聞ってアンテナだな、とずっと前から思ってて、気の流れや「大方のコンセンサス」を読むための媒体であり、自分の第六感レーダーをもっとも使う瞬間ですね。電子版を日々読んでいる今もそう。
僕以外の取材をうけた方々が藤田晋さん、佐藤光紀さん、笠原健治さん、吉松徹郎さん、と社会的に上手くいってる方ばかりなのに、直前に失脚してシンガポールに退いてた僕でいいのかなー、とかぶっちゃけ思ってました。
実際、この記事が世に出た頃にはもうPanAsia Partners(現AA-IC)を退任する感じでしたしねぇ。
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【 IT社長は新聞を読んでいる 】 一般教養は新聞を読まないと身につかない。
加藤順彦さん    PanAsia Partnersパートナー(シンガポール代表)
 
新聞は世論だと思っているんです。事実を知るにはインターネットの方が早い。それよりも、「世間はどう」と思ったときに、ものの見方を示すのが新聞の役割じゃないか。社説は会社を代表する意見です。コラムや署名原稿は、載せる価値があると新聞社が判断している。そういうのが読みたいんです。
僕が若いころにインターネットはありませんでした。広告会社をやるには、あらゆることに興味を持たないと成り立たない。でも、これだけ情報があふれていると、何が自分に必要か分かりません。だから、若い人は早いうちからアンテナを立てる場所を決め、それ以外の情報を取らない。それでは精神的な引きこもり状態にものの見方や様々な価値観を示す新聞はとても大事なんです。
僕はシンガポールで日本の新聞2紙を購読しています。事実は一つですが、新聞社によって真実は違う。事実のとらえ方を知るためには、複数の新聞を読む方がいいですね。私にとっての真実が世の中のすべてではないから。ジン減として成長するためには、一つの事実に対してたくさんの真実を知ることが重要です。
ニュースは事実ですが、事実をどう見るかということに価値があります。一つの事件をどう掘り下げるか。どういう人間模様があったのか。速報性よりは、記事の背景にある記者の考えや、事実を探求しようとする尊い精神みたいなものに興味があるんです。
例えば現在の金融恐慌を解釈するために、ものすごく新聞の力を借りています。あまりにも多くのことが絡んでいるので、いろんな角度から見ることが求められてる。派遣村の問題にしてもそうです。自分の価値観と違う新聞の価値観を知ることも大事なんです。いろいろな見方を吸収する上で、新聞の役割はすごく大きい。新聞を読む人と読まない人では、知的レベルに大きな差が出ると思っています。
僕は経済面が最も気になりますが、いわゆる三面記事も読みますね。世相を反映する記事が多く、書き手が想いを反映させているんだろうなと。僕は広告の仕事をしていたので、紙面のレイアウトや見出しなどを見て、何を伝えようとしているのかを考えます。写真の選び方もいろいろ悩んでこれうしたんだなと、作り手の発想から考えます。同じ事件、事故でも、新聞社のとらえ方や写真、見出しは違う。現場で同じ数十人からコメントを取っていても、紙面で取り上げるコメントの選びからは勝手です。そこに新聞の個性があるとおもいますし、だからこそ複数の新聞をよむのがいいんです。
ネットが普及し、ブログなどをやる人が増えました。情報を発信することの価値観が変わっています。これからは一人一人がメディアになっていく時代、つまり「個人のメディア化」が言えるんじゃないか。新聞社はそれを支援していくべきだと思います。その一つのヒントが読者投稿欄です。会社の価値観が反映され、ほとんどの投稿は載らないと思いますが、掲載基準を見直すのも一つの方法じゃないか。例えば、没になった投稿をネットに載せるとか。内容や投稿者によって分け、高齢者介護についての30代の見方、東北地方の人の見方などを紹介すれば面白いですね。
 
個人のメディア化は、読者の問題なんです。ネットは読む順番をコントロールできる、新聞社側も、平等に情報は出すけど、読ませたいものは上位に出せばいいんです。インターネットは自分の知りたいことを検索する「目的メディア」です。ところが新聞は価値観を提供するので、自分がまったく興味のないことも書いてある。読まなければ、生涯知ることのない情報が載っている。それが新しい価値観や、ものを見る目を養うんです。だから新聞を読むわけです。
ネットで知りたい情報はいくらでも手に入るけど、一般教養は新聞を読まないと身につかない。自分が未熟だと認めるならば、新聞を読んでほしい。「おれは仙人だ」という人は必要ないですけどね。ただ、社会の一員としてやっていくために、世の中で起きていることを知るのは大事だと思います。
今の若い人は海外に興味がありません。ロシアは東欧とどんな駆け引きをしているのか。なぜアイスランドは債務不履行をしたのか。海外に興味のない人に世間を知ってもらうメディアとして、新聞は大事だと思います。「何でも見てやろう」という人が少ないのは残念ですね。
新聞はウェブサイトで社説や論説をどんどん発表すべきだと思います。世の中の人は「ああ、新聞はこういうことを考えているのか」とわかる。正義を求め、悪をたたこうとする新聞の情熱を知り、自分はもっと啓発を受ける必要があると感じる。僕は万能ではないし、全人でもない。そういう人は、自分が成長したいから新聞を読むし、そうしろ、もっと賢くなれ、といいたい。あなたの物の見方は世の中のすべてではないということを、新聞を読んで知った方がいいと思います。
Ⓒ 日本新聞協会 2009年