ネット広告というカテゴリが消えて、誰も知らない大ヒット商品が登場する|宣伝会議 03年9月号
勝手に文字起こし=デジタル化 する自身のインタビューシリーズの10件目は、広告界の業界誌『宣伝会議』2003年9月号の第一特集「大予測 どうなる!?10年後の広告ビジネス」に掲載された加藤の寄稿です。お隣で[モバイル]の10年後を占っているのはD2Cの藤田明久社長ですね。
この特集は「マスメディア、新興メディアの将来について未来洞察を行うとともに第一線で活躍する企業人に10年後のビジョンを描」かせるという趣旨で、各メディア、広告手法別に原稿を集めており、僕は[ネット広告]を担当させて頂いたという次第です。さて本日、10年どころか… 17年ぶりに目を通しましたが、当たってる部分もありますが、予測を大きく外したものもありますねぇ。
最も外してるのは、電通さんはいまだ「日本の広告費」でインターネット広告という縦割りカテゴリを残しておられることですww。
ご存じの方も多いと思うのですが、2019年、遂に日本において、テレビメディアの広告売上をインターネット広告費が抜き去ったというのが昨今のトピックでして… ほんと随分とかかったなぁ、と。
2019年の総広告費は6兆9,381億円と、この寄稿を書いた時に観てた2002年の5兆7,032億円に対してそんなに増えていませんが、一方で現在の「インターネット広告費」はその全体の30.3%=2兆1,048億円(前年比119.7%)を占めているようです。ま、そらそうだ。
・電通報による 2017~19年の推移解説: https://dentsu-ho.com/articles/7161 解り易いです。
・昨今においては、インターネット広告は細かく手法や内容ごとの市場規模の調査を、D2C,CCI,電通デジタルと共に行っている、ということを知りました。 https://www.dentsu.co.jp/news/release/2020/0317-010029.html
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新興メディアの10年後 [ネット広告] ネット広告というカテゴリが消えて、誰も知らない大ヒット商品が登場する
日広 代表取締役 加藤順彦氏
日本にインターネット広告が登場してまだ8年程度なので、10年前はインターネット広告業界は当然なかったわけですが、10年後の2013年もインターネット広告というカテゴリはなくなるだろうと思います。
電通発表によると02年の「日本の広告費」は5兆7032億円、うちマスコミ四媒体広告費(3兆5946億円)は前年実績を下回り(92.4%)2年続けて減少。しかしインターネット広告費だけは845億円(前年比115%)でした。
私はインターネット・プロトコル網とは道路やガスとほぼ同義の21世紀の基本的インフラだと思っています。昨今はブロードバンドの爆発的普及に伴いBBユーザーをターゲットしたウェブサイトが急増、昨年からはテレビ用に製作された番組が放送され、今年中にはCFもオンエアされるようです。
近い将来、著作権関連の問題が解決し、テレビ用番組がIPというインフラ上で放送されるでしょう。そうなるとインターネットの上を走るコンテンツは、現在ラジオやテレビで「番組」と位置づけられているもの(ドラマや、バラエティ、ニュース)がメインになりそうです(無論その折には通信のインタラクティブ性を活かした参加・経験型「番組」が多くなるはず)。
最近ヤフーが電波媒体と同じように「時間帯別配信」広告の販売を開始したのも、この流れを睨んでいるように思います。そうなるとネット広告という独自分類が霞み『日本の広告費』におけるマスコミ四媒体と分類されている経済とクロスオーバーして「インターネット広告費」はカウント不可能になります。
そういった状況を迎える今後10年を考えると、インターネット「専業」の広告会社がいかにして生き残っていけば良いのか考えなくてはなりません。
ひとつ潮流として見ているのは、昨年末から伸びているオーバーチュアなどのリスティング・サーチエンジンマーケティング分野です。確かにマスメディア+ネットで「確認・焼き付け効果」を期待できる重複接触を最適化・リーチ最大化するメソッドは説得力があります。しかし全ての広告主が「広く遍く」の認知理解を求めてはいません。予算の限られた多くの会社にとって大切なのは「今後の見込み顧客層に訴求する」こと。インターネットというインフラの凄い点は、マッチングのITテクノロジーを駆使し、効率を極め、ピンポイントにターゲティングした層にのみブランディングすることが可能であることです。
10年後は、顧客にだけその存在が知られる消費財が存在すると思います。歴史的なヒット商品であるものの、買った人以外は売り出されたことすら誰も知らない、という。
マーケティングは「ターゲット・ブランディング」だけでやるわけです。
加藤順彦氏
1986年関西学院大学入学直後リョーマの起業に参加。89年ダイヤル・キュー・ネットワークに出資・入社。その後徳間書店グループを経て92年日広を設立。現在に至る。日広はインターネット/モバイル広告に専門特化した広告会社。日広を含むQSTOグループ4社の昨期年商36億円。オリコン・エンタテインメント取締役も務める。