ベンチャー相手の商売ってのは、無担保の金貸しみたいなもの

2020年5月14日

JUGEMテーマ:経営

2月11~13日とグロービスの堀さんが小淵沢でG1 サミットって会合をされてたのですけど、その場から新ネットエイジの西川さんが『金融機関出身でなく起業家出身のベンチャーキャピタリストがもっと増えるべし』と発言されてまして。いや…まったく「我が意を得たり」な心境。

一兵卒として、さんざん不肖加藤もハンズオンをやってきましたが、エンジェル投資だけではやはり無理があります。社長あがりのベンチャーキャピタリスト、必要ですよね。日本にも。

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06年6月。僕が経営していた広告会社NIKKOは14回目の決算を迎えました。年商102.8億円。
設立以来の大台に乗せた節目となりましたが、当時の僕は深刻に落ち込んでいました。

3ヶ月前の3月。月商は初めて10億を越えたのですが、まさに3月を境に売り上げが急降下していたからでした。原因ははっきりしていました。お得意先の広告予算の消滅です。

その年は新年早々から、週刊ダイヤモンドの特集「10年後の大企業」にて、NIKKOが未上場部門で4位に選ばれるなど幸先のいいスタートだったにもかかわらず、その発売直後の1月16日のライブドアショックから、上場していたネット・ベンチャーの株価は急落していました。

お得意先の市場価値が一気に十分の一に落ちる!など急速に収縮したことで、最も短期的に経費の調整幅として影響を受けやすい広告費はみるみる圧迫されていっていたのです。

構造的な欠陥でした。
もちろん、加藤自身はそれはよーくわかっていました。問題と認識しつつ何年も放置していました。それは弱みでもありながら、強烈な強みでもあることを良く知っていたからです。

そう NIKKOは、クライアント層があまりに新興企業に偏っていました。

ぶっちゃけると他代理店が手を出せない領域を、僕は数年間にわたり確信犯で取り込んでいました。

・新興の携帯コンテンツ・プロバイダ(いわゆる専業CP)、
・極端にマージン率の低い海外の消費者金融業のSEM、
・いわゆる結婚情報産業=出会い系、
・短期労働請負業(つまりグッドウィル・フルキャスト)、
・スタートアップの自称ネットメディアやネットサービス・・・。

まさか自分が官製不況で木っ端微塵にやられるとは… 『想定外』とはこのことでした。

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遡ること6年前:2000年。
僕は2月のネットバブル崩壊(光通信・ソフトバンクの株価大下落)こそ逆張りの勝機とみて、4月以降、積極的な中途人材採用、事務所の拡張、関連子会社の設立と攻勢をかけました。

ネットバブルの崩壊を間近に見た、大手の広告会社や媒体社が新興のベンチャー企業との直接取引に腰が引けるだろうとみたのです。

さいわい始まったばかりの携帯電話向けのコンテンツプロバイダに関しては、加藤のダイヤルキューネットワーク時代の人脈も地の利もありました。

NIKKOの売上は、02年6月期には22.7億と(前01年比で微減)横這いとなったものの、03年29.4億、04年51億、05年73億、、と順調に売り上げを伸ばせたのです。

その伸びた最大の要因は、ネットへの追い風を掴みそうなお得意先の想定業種でした。

電通、博報堂、ADKなど業界大手および、CA・オプト・セプテーニといった上場ネット広告他社が手を出し辛い領域=上記のような業種に、新規開拓の矛先を絞ったのです。

僕は知っていました。
伸びる企業は、グレイ・ゾーンにこそ多いことを。
急進しているベンチャーほど、小さい資本の自転車フル操業であることを。
新しい企業は、金融機関や信用情報調査会社のレーティングが低いことを。

だから例えば(当時の僕の十八番だった)携帯電話向けのコンテンツ・プロバイダ各社とのお付き合いはだいたい…こうでした。

資本金が2000万円そこらしかないのに、月3000万円以上も公式サイト用の広告を買うのです。
そして平行して広告で会員を集めながら、第三者割当増資する企画書を作ります。「いま順調に会員を集めているから、資本参加しませんか?」と。まさにマッチポンプ。

実は…iモードもEZwebも公式サイトはいま上がった売上が実際にコンテンツプロバイダに入金されるサイトは、4ヶ月先です。(因みにこの資金サイトは、今もそうです)

だから広告費のほうがどうしても売上の入金よりも前に出て行きます。ところがコンテンツプロバイダはスタートアップなのでそもそも手元に事業資金がほとんどない。設立まもなく、まだ赤字だから銀行からも借りれない。

そこで出番です。僕自身がそもそものビジネスモデルや売上の状況、経営者のナマの声を確認し、広告費の支払いを末締めの翌々末まで引っ張り、できるだけ広告主のキャッシュフローに協力するのです。

更にこれは!!と思えるような将来有望なベンチャーの場合は、第三者割当増資を実施させ加藤個人にて出資し、入れたお金をそのまま広告の資金としてNIKKOに発注させていました。
(結局、97年~03年の間だけで、加藤個人として30数社のスタートアップの第三者割当増資に参加しました。ほぼ全社に広告費用として遣ってもらってました。)

つまり、その当時やっていたことは 事業資金の融通と資本注入でした。デッドとエクイティ。

僕は08年にNIKKOの株式を手放し役員を退任するまでの16年間で累計でユニークで1000社を超えるベンチャーに売掛金を立ててきました。

常に念頭においていたのは、如何にイケテない会社・事業・個人と付き合わないか、でした。
広告枠の仕入代金は、売掛が回収出来ようと出来まいと、NIKKOとしては毎月きっちり支払わなくてはなりませんからね。コチラに事業を診る目がないと、すぐに原価(だいたい売上の85%~80%)すら回収できなくなるのです。

だからこそ、僕もそういう経験の豊富な人ってベンチャーキャピタリストにもすごく向いていると思うんですよね。西川さんの仰る通りですYO!。

にしてもネット黎明期には、それでどうやって儲けるのか!?!って商売多かったなぁww