アジア内需に挑む日本の消費財企業 2 ■若者が減ると広告業は困難に

2022年3月8日

前回に続き、シンガポール日本商工会議所さまが会員向けに発行されている会報誌「月報」7月号へ寄稿させていただいた拙文「アジア内需に挑む日本の消費財企業~国内高齢化を乗り越える 独資或いはJV勝ち組の共通点~」を一部改稿して、ご紹介いたしまぁす。

下の本文にもあるんですけど
加藤は一個人マーケターとして、ほんとうに、こっから先の日本の内需を押し上げるのはきわめて難しい!!と思っています。

主な理由は、いずれも速度を増している
・ 少子化と高齢化の進行
・ グローバル経済の進行
です。

政権交代で高速道路も無料になる(とほほ・・)し、民主党の主張するようにモノやサービスの絶対価格は下がっていくことも考えられます。つまり、ますます日本国内で消費されるお金は減っていきそうなわけです。

となると円の価値は相対的に上がりますよ!(こういう理由で円の価値が上がるのは??ですけどね)デフレ、デフレ。

でもね、売り手の立場から考えれば、消費市場そのものが大きく縮小していくなかで、プレイヤーが市場からの値下げ圧力のなかで相互に消耗戦やってても意味ないと思いません?。

世界の投資家の評価は売上・利益の右肩上がりの拡大なわけですから。

だから、これからはアジアで勝つためにも、日本国内の勝ち組の同業(競合)同士の合併=合従連衡ですよね。フツーに。

競合同士での競争をしなくなれば、国内事業での価格維持できて利益増えますし。合併以降は「規模の経済」によって成長著しいアジア消費者市場に打って出れますしね。

もはや日本の消費者のためだけに毎月/毎週、缶ドリンクやスナック菓子の新製品を多産多死で投入し続けている場合ではないんですよ。

加藤は日本市場は高い利益率で売上維持しつつ、どんどんアジアに出て行くべきだと、主張したいんす。
カルビーのペプシコグループ入りも大いに納得しておりま~す。

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2 ■若者が減ると広告業は困難に

何故、筆者が「若者が減ると広告業は困難だ」と思っているかというと、買い替え=ブランドチェンジが起こるのは若い人(が、ほとんど)だ、と思っているからです。

筆者はそもそも「広告の目的」というのはブランドチェンジ(或いは刷り込み)だと考えています。

消費者に対し広告を通じて、今お使いになられているモノから新しい別のモノに「買い替える」事を促す、ということです。

売りたい商品を訴求するべく、アイデアを提供したり、パッケージやコピーを変えたり、人気タレントを起用したり、店頭プロモーションしたり、値引きしたり、特典をつけたりして、通常購入している同カテゴリー商品との差異を謳います。

すると若者はまだ人生が短いので、いまのところ「ブランドを決めていない」し、可処分所得も少ないので、ちょっとしたメッセージやきっかけ、価格差で今まで買っていたモノを替えてくれるんです(広告活動の成果が出易い

一方で成熟した消費者である高齢者はちょっとやそっとのことではブランドを替えてくれない。人生の経験の中で大方の日常消費について「いつもと違うものを買わないことで、失敗しない消費」についての知恵を身に付けています。そう、総じて保守的なのです。

マヨネーズもシャンプーもビールも雑誌も車のメーカーも替えない。半額であってもキューピーを味の素にマヨネーズ替えない。好きな俳優が広告に出てても長年乗っているニッサンをホンダには替えない。タダで貰ってもキリンラガー以外は飲まない。

(→言い換えれば、高齢者こそ低価格や新しいアイデアに購買を左右されないロイヤル・カスタマー

ルーティンにない消費行動を取り、ブランドを替えることによって、新しい成功体験を掴む可能性を手にすることができるのは若者なのです。

近年、視聴率が取れてても或いは販売部数が堅調でも、広告が売れてない番組や新聞・雑誌が増えたのは(率と広告収入が比例しない傾向なのは)視聴者内訳のターゲット差異が主因だと思っています。

実際、テレビ視聴者は(ネットやらない・仕事リタイヤしている)高齢者が多いわけですから、単に視聴率を取ることだけが目的なのであれば、その層にコミットして企画考えたほうがいいはずです。

それでも改編期に発表される新番組のターゲットが、敢えてティーン~35歳以下の男女中心なのは、そのほうが広告収入が見込めるからです。広告したい事業者は「若者への新しい消費(ブランドチェンジ)の提案」が主目的なのです。

・・となると、どうなるでしょう。
そうです。現在の日本の勝ち組の企業は、こと日本においては売上はさておき、シェアを下げることも起こり難い、ことがわかります。

つまり国内市場においては、当面勝ち組はより勝ちます。

しかも、宣伝しなくても値引きしなくても品種改良しなくても、従来のロイヤルカスタマーは買うことを止めないのでシェアは上がり、利益率も向上します。

となると、儲かっている勝ち組は、国内市場では効果の見込めない広告をしないし、シェアの低い負け組は今後は広告が効かなくなる高齢化進行でますますシェアを高めるのが困難に。

そして・・広告業はより厳しくなる、というわけです。


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ところで、
高速道路が無料になって物流関連コストが下がって→結果的にモノやサービスの値段が安くなると、もともとお金持っていた人がいちばん有利ですね。
高齢者とかね。ではまた。