なぜ、シンガポールなのか? 税制面だけではない、本当の魅力:再掲 2013/6

2023年3月20日

株式会社Resorz運営サイト出島の『海外ビジネスコラム』に2013年に5回掲載されたコラムを再掲いたします。今回はその1回目。

連載は同年『シンガポールと香港のことがマンガで3時間でわかる本』(明日香出版社)を関泰二さんと共著で書いた際に、そのエッセンスをResorzさんからまとめてほしい、と依頼されて書いたものですが、読み返すといま尚シンガポールの本質的価値が10年前とほぼ変わってないことを認識できます。

連載往時は関さんと取り組んだレンタルオフィス/コワーキングスペースCROSSCOOP Singaporeを主拠点にしつつ、未曽有の円高を背景に東南アジア各都市に続々とCROSSCOOPを開業していた時期でもありました。

 

 

世界で最も外国人がビジネスしやすいと言われる理由とは?

今、シンガポールには事業子会社や支社、駐在所、持ち株会社、事業統括会社などの設立ブームの最中にあります。
なぜ、私がクロスコープを持ってきたかというと、移住して1年経った頃に、そういう企業がまだまだたくさん出てくることを実感したからです。
今作れば多くの受け皿になれる、と。

シンガポールには今、7000社以上の日系企業があるといわれています。
では、そんなシンガポールの魅力とは何でしょうか?

「それは、安い法人税だ」と考える人が多いかもしれません。

当然、それもありますが、それだけが魅力ではありません。私の思うに本当の魅力とは、大胆な移民戦略を経た末に手に入れた「環境」です。

20年間で200万人以上も、しかも戦略的に富裕層や、高額所得、高学歴の移民を増やしてきました。
その外国人比率はなんと人口の30%超。また、地政学的にも28億人を超える市場に直接アクセスできる「環境」にあります。

シンガポールは「レッドドット(地図上の首都を示す赤い丸印で隠れてしまう)」と呼ばれるほど小さな島国です。
東南アジアでは、ほぼそれぞれの国が、一言語一人種一国家を持っています。そのため、同じ民族がイデオロギーで揉めた例が少ないです。ただし、東南アジアの国々には古くから華人が住んでおり、マレー人が住むマレーシアにも華人が住んでいました。お金持ちで商売に長けていた華人たちが人種優遇策による差別に憤り、マレーシアから1965年に話し合いによって分離独立したのがシンガポールです。

当時のシンガポールはジャングル地帯で、畑も無く、食料自給率もほぼ0%、川も水も無く、無い無いづくしの小さな場所で、「どうやって生き残るのか?」というイデオロギーが、シンガポールのDNAとなりました。

その戦略として、「大胆な移民政策」があり、それによって成長した国家がシンガポールです。

そうした「生き残り」のイデオロギーを持って成長してきたので、シンガポールの人々はスタンダードが違うのが当たり前という感覚です。

ビジネスにおいても、外資か内資かという区別なく商売ができます。

日本は日本人が一番商売をしやすい国家です。もちろん、それは日本だけではなくて、中国、インド、アセアン諸国、みんな同じです。自国の民が作った会社を守る風潮があります。ただ、日本が一番強く、過保護すぎるきらいもありますが……。

余談ですが、日本は外国人が起業しにくい国No.1と言えます。

 

 

 

ASEANビジネスの計画を立て、リーダーシップを取る場所

さて、そんなビジネスのしやすい国には、当然ビジネスの上手な会社、そして優秀な人材が集まります。

特筆すべきは、津波や台風といった自然災害リスクが無いメリットからも、GoogleやAmazonがデータセンターを置く様になっています。そうした環境が相乗効果を生み、企業だけでなくシンガポールという国自体を成長させています。

だからこそ、私は東京にて着実と成果を挙げていた「クロスコープ」というサービスオフィスにシンガポールに、東南アジアに持ってきたのです。

シンガポールは、まずは物流拠点として栄えましたが、コンテナ荷物を積み下ろししてお金に換える事から世界中から紙幣が集まり、やがて金融センターになりました。

そして世界中の銀行が集まり通信による取引が盛んになると、腕利きのトレーダーやファンドマネージャーが集まり、キャリアアップを求めて優れた人材が集まる人材センターになりました。

こうして、人・モノ・金が集まるシンガポールは、20年掛けてビジネスのハブとして、最も効率的な国になりました。

今やシンガポールは、ASEANビジネスの計画を立てる場所であり、ASEANビジネスのリーダーシップを取る場所なのです。

それでは、次回以降はシンガポールを始め、アセアン各国での私のビジネス経験から見えてきた成功の秘訣や落とし穴について述べたいと思います。

 

初出 海外ビジネスコラム   2013年06月12日

https://www.digima-japan.com/column/market/1329.html