海外配当非課税で、日本の産業空洞化はより進む♪

2020年5月19日

みなさん、ご存知のとおり、中川昭一さんのへべれけ記者会見問題で平成21年度(2009年4月1日からの一年間)予算案の審議中にもかかわらず、まことに残念ながら成立を迎えないまま、担当の財務大臣が辞任・交代になっちゃたわけです。

で、中川さんが、一旦は辞める前に成立を見届けたい、といってた年次予算ていうのはコレです。
それにしてもいつも思うんですが、・・とても眼を通す気には慣れない量ですね。
(紙の新聞が素晴らしいのは、なんにせよ行政の長ーい文書の特筆すべきポイントを要約してくれてるところだと思います)

膨大な量の年次予算に関連して、さまざまな税金のあり方もチューニングされているわけですが、
そのなかに、経済産業省の貿易経済協力局が取りまとめた提言に基いて、昨年12月にでた自民党の平成21年度税制改正大綱・予算重要政策のなかに、本年4月から実施したい外国子会社配当益金不参入制度の創設、というのも盛り込まれております。(ちなみに70ページもある↑自民党改正大綱では38~40ページです)

これは、これまで施行されていた「内国法人等の特定外国子会社等に係る所得の課税の特例」ってやつを更に改正をしようってことなんですけど、まぁ要するに 外国の子会社から吸い上がってくる株式配当の収入は利益に95%(つまりほとんど全て)課税しない!ってことです。

要点をすこし箇条書きにまとめると

海外配当非課税について
1) 対象
発行済み株式等の25%以上保有
配当支払い義務確定以前6ヶ月以上、引き続き直接に所有

2) 実施時期
2009年4月1日以降、開始事業年度  
明細の記載+書類保存必要

3) 内容
1 海外子会社からの配当 は 95%益金不参入=5%のみ課税
2 間接外国税額控除制度  は 廃止
3 その配当に係る源泉所得税は、直接税額控除の対象外+損金不算入

と、こんなところでしょう。

これまで、日本という国は欧米先進各国とは異なり、海外の子会社が日本の親会社に対し株主配当をしない限り、日本の法人税の課税が発生しない「外国税額控除制度」を採用していました。

で、結果とどうなってるかといえば、上がった利益の大方は、配当として日本の親会社には動かさず、実はそのまま海外に留保されているのが現状なのです。

経済産業省はこれまで、日本に還流されないでいた、日本企業の海外現地法人の内部留保の総額は12兆円強はある と推測しています。

世界最高の法人税率水準(実効税率 40.69%)である日本。

その日本よりも法人税率が低い国(つまりほとんど全部の国)にある海外子会社から配当を受け取ると、相対的に税額が増すことになっていたわけですから、たしかに留保の現状は頷けます。

経済産業省は今回の改正の実施によって、海外子会社からの配当をほぼ非課税とすることにより、日本企業が海外で稼いだ利益を日本に資金還流させ、国内での設備投資、研究開発投資の活発化や雇用維持、個人消費・内需への還流につなげられると、仮説を立て改正に動いてきたということのようです。

が、どうでしょう?皆さん。
4月以降、本当に経済産業省の目論見どおりになると思われますか。

確かに、順当に考えれば、この改正が成立したのちは、日本企業は今後は、もっと海外法人を稼げるようにしようと、今よりも海外へ売上や利益を移そうと、すると思います。

そういう意味では、日本企業のアジア進出増へ向けて、この改正は順風インパクトがあるでしょう。

しかし、そもそも海外への生産拠点の移転は、この税制改正とは関係なく絶え間なく進行し続けています。
また着実に進行しているまた世界中のローカル内需に対応した現地での販売活動が広がっていく限り、日系企業が日本の本社へ内部留保資金をどの程度送金するかは、加藤はかなーり不透明だと思っています

これまで
円高と高い労働コストに苦慮した輸出型(いわゆる外需型)の企業は、国内より低コストで実際の市場に近い海外への進出を選択してきました。

ぼくは、税率の低い海外で現地法人をつくり、その地で法人税をちゃんと納めれば、残った利益を日本に上げてもほぼ非課税!なぁんてルールに変えたからといって、生んだ利益の運用として、海外よりも日本国内で投資した方が高い連結収益につながると判断するよな業種・企業は、相当限られているんじゃないの?と思っているのです。

むしろ、このルール改定によって、税務当局(つまり財務省)は海外子会社にへ売上や利益を移そうとする日本企業に対し、これまでよりも激しく移転価格税制・タックスヘイブン税制※を厳しくみるようになるとみています。

さらに当局は、改正以降は海外子会社からロイヤリティ(ブランド料・知財コスト)をもっと取れという指導をすることになるでしょう。

この税制に変わっても、結局いままで同様、配当として利益の大方が日本に戻ってこないままなら、ほっとくとただ今に比べて単純に税収のグロスが減るだけですからね。

その結果として
加藤は、日本発のグローバル企業は、税務当局からの移転価格税制適用をかいくぐるべく、利益のモトであるR&Dをも海外にまるごと移転するほうが安全ということになるのではないか、といま思っています。

しばらく円高なんで、日本から輸出しようとしても高すぎて売れないし。

結局、世界に挑む日本企業は、シンガポールなどにブランドや特許の研究開発拠点や研究者や開発の人材ごと移すことが考えられます。で、売れる分を現地生産すると。

つまり、この新税制が引き金となって、むしろ更に産業の空洞化が進行する、のではないかと思っているのです。

ぼくは産業空洞化 上等!論者ですので、そうなるのは大歓迎なんですけど。
ただ、どうも経済産業省の青写真どおりにはいかんような気がするんですよ。

※ ところで、タックスヘイブンとは「tax haven」、つまり直訳すると「租税の避難所」です。これを「tax heaven」つまり「税金天国」と間違える人がいるんですが、スペル違いなのでぇす。