おはなしにならない
先週の上海、今週のシンガポール、昨日からのジャカルタ、どこもオリンピックや独立記念日があって盛り上がっているのですけど、それにしてもほんとに日本人少ないです。
ジャカルタは東南アジアでも最も日本人居住者の多い都市のはずです。
にもかかわらず、昨日今日の二日間、ハイエンド向け・ミドル層向けの高級ショッピングセンターばかり5~6箇所も視察に出ているのですけど、まったくと言っていいほど、らしき人を見かけないのです。いったい同胞は何処にいるのでしょうか。
2年前、こんなことがありました。
いまも大躍進を続けているネット企業のG社から、世界中のビジネスパートナーを一堂に集めた大カンファレンスに招待を受けました。
それまでも何度も西海岸やNYのネットメディアやサービスの企業にはご訪問していたのですが、さすがに全世界から同時に同じ場所に300人!もの同業者やメディアパートナーが集まるという機会は、そのときがはじめてでした。
招待者限定のカンファレンス。
日中は2日間に渡り、ずっーと主に米国の著名なIT企業経営者や学者・政治家による講演やパネルディスカッションがあるのですが、、、加藤が驚愕したのは、その内容ではなく、それらの同時通訳をヘッドフォンをして聴いているのが日本から来ている15人のうち10人強だけだったことでした。
いや、よくみると主催者が同時通訳者を用意しているのは英語→日本語だけでした。
日本人以外の招待者は全員ひとり残らず英語でのスピーチをそのまま聴いていたのです。
英語しか話さないアメリカンが同時通訳を必要としないのは分かります。
ですが、その場には20カ国超の国々からの招待者がいました。ヨーロッパや南米、もちろんアジアからも中国、台湾、韓国、香港、インド、シンガポール、インドネシア、タイetcと幅広く招待されていました。その全員がネイティブの英語が聞き取れているのです。あの早口の。
更にショックだったのは2日間に渡って開催された夜のパーティです。
G社の幹部層と招待者が交わって歓談するパーティは同じ業界に身を置く異なる国のキーマンでたいへんな賑わいとなりました。みな国境や商圏を越え闊達なディスカッションとなっています。きっと商談や提携のネタ繰りで盛り上がっているのでしょう。
一方、私はもちろん日本から来ている日本のネットメディアおよび広告業界のメンバーはほとんどと言っていいほど他国の方々とのコミュニケーションになりません。
もちろん日本からの招待者のなかに英語が分かって話せる人はいたと思います。
しかしまるで不定形生物体のように、日本からの12、3人は群れ、パーティ会場のはしっこで緩く固まってしまいました。
各国からの招待者やG社の幹部たちは、私たちに慮り、近寄ってきてはくれます。
そして名刺交換、軽い会釈・握手はするのですけど、そのあとのコミュニケーションは続きません。私自身も薄ら笑いで愛想作るに留まります。日本に帰ってきてからもメールやSKYPEのコミュニケーションには繋がりません。
この経験は私にとって極めて大きな気づきとなりました。
加藤自身、中高6年、大学2年と英語教育を受けているはずです。一緒に行っていたメンバーも同じかそれ以上の学習を経ています。
またかつて日本は世界で最も活発に海外旅行をしていたはずの国です。斯く言う私も、それまで20度を超える出国経験がありました。でも、その度に当たり前のように通訳の方に訳して貰っていました。なんの躊躇いも感じてませんでした。
いったい私は、いままで何をしてきたのか。
英語を8年も学びナニを得てきたのか。
海外旅行に出てナニをしてきたのか。
グラマーを受験用の知識として得てきただけではないのか。エッフェル塔やナイアガラの滝をバックに記念写真を撮ってきただけではないのか。
そして日本のネットベンチャーが概ね内需100%の売上にとどまり一歩も海外に出られていない理由は、もしかしたらコレが主因なのではないか。
英語が話せないのではなく、英語を話さない、異国の方と話そうとしないメンタリティこそ成長の芽を摘んでいるのではないか。
おはなしにならない、とはまさにこのことなのではないか。
シンガポールに移住して、よくご指導をうけるのは「日本人コミュニティに埋没するな」という点です。実際、群れているらしいです。
金融関係或いは商社やメーカーの方が2~3年の駐在、というのが居住者の典型だと思うのですけど、シンガポールに限らず、下手するとほとんど日本語以外喋らないまま帰国することが多いそうです。
今日、ジャカルタにいる数万人の日本人もまたそうだとしたら、この国の爆発せんとする成長に関われないのではないか、と感じていいます。
もちろん語学力そのものは必要です。
がその前に、多様性を受け容れ、目を合わせて「おはなし」に努める姿勢がないと、その力も結果に繋げることはできないのではないでしょうか。