アジア内需に挑む日本の消費財企業 4 ■独資或いはJV勝ち組の共通点
シンガポール日本商工会議所さまが会員向けに発行されている会報誌「月報」7月号へ寄稿させていただいた拙文「アジア内需に挑む日本の消費財企業~国内高齢化を乗り越える 独資或いはJV勝ち組の共通点~」を一部改稿し4回にわけて御紹介しており、今回で終回となります。(1回目・2回目・3回目は←それぞれ←こちらです)
そもそものこの論文(?)を著すことになったきっかけは、日本新聞協会さんの定期購読キャンペーン「新自聞スタイル」の加藤のインタビューをご覧いただいた方からのご意見でした。
「日本人は日本企業がいま何故アジア内需市場で自社の事業を伸ばそうとしているのか、その背景を知っている人が少ない、と思う。日本を離れ、アジアにいる人たちだってよく分かっていないのではないか」
長文に亘りましたが、シンガポールに移住してのここ一年、このブログや講演などでお伝えしてきたことを纏められているのではないかと思います。繋げてご一読いただければ幸いです。
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4■ 日本企業 独資或いはJV勝ち組の共通点
皆さまもお聞き及びだとは思いますが、ここで例に挙げた中国はほんの数年前まで、日本企業が独資進出することはほぼ不可能な国でした。
しかしながら上記に挙げた会社は、まだまだ独資進出が困難な状況であるにもかかわらず、独資にて進出している会社が多いのです。また合弁企業の場合もシェアの多寡を問わず、事業が上手くいっている企業は、商品やサービスそのものが持つ強みはほとんどいじらずに、売り方(しくみ)や見せ方(表現)をローカライズして戦っています。
当初は日本の事業を丸ごと移植するつもりで現地合弁会社を作ったのですが、ローカライズ/チューニングの果てに日本のそれとはまったく異なる事業となって、結果成功したケースもあります。一例を挙げさせていただくと、タイのすかいらーくがまさにそれです。
同業に比して、かなり初期の91年にJVで始まったのですが、フードコートへの出店戦略を柱に独自の近代的!屋台の業態を開発し続け、順調に売上は大きくなっていた会社です。
ところが、実はこの5月末、すかいらーくは所有していた全株式(49%)を手放す決断をしました。
もちろん、現在の日本の同社自体の経営状況が厳しいのは、ご承知の通りです。
しかし、このタイ法人株式放出における最大の問題は、あまりにも日本の事業と全く違うものになってしまい、ブランドや資本の共有が無意味になってしまったことにある、と見ています。歳月の果てに日本からの持続可能な価値の提供が不可能になっていたことも大きいでしょう。
この10ヶ月、多くの日本のサービス提供会社を観てまいりました。もちろん独資もJVもありました。
それらを並べてみて、勝っている会社の共通点であったのは、独資であっても、マイノリティ出資であっても、日本での事業の哲学やサービスの本質の現地化にこだわっている点でした。
つまり勝てるやり方は、独資かJVかではなく「ローカライズを経た上での、企業理念の実現」ができているか、ということがキーだったのです。
独資あるいはJVの組み方、組し方は色々あるにせよ、一定の法則というのはないとみています。
JVを選択する場合も、進出地域におけるブランド戦略が重要なファクターになる消費財企業においては(特に)このブランドを具現化できる資本構成あるいはJV相手とのコンセンサスを取っておくことは必須でしょう。
筆者の所属するPanAsia Partners PTE LTDでは主に日本の企業(特に最終消費財事業が多い)のアジア進出を支援することが生業ですが、様々な成功失敗のケース分析から、ブランドバリュー実現に懸念の残りそうな現地ローカル企業とのJV設立には、警鐘を鳴らしています。
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残念ながら日本の高齢化トレンドは当面50年は決して変わることのない大潮流です。
筆者は「が故に、シェア下位の消費財(新製品含)へのブランドチェンジは、消費が成熟した日本国内市場においては困難」とみています。
ならば戦後60数余年を経て(今のところは)世界第二のGDPを誇る日本は、あらゆる産業が、これから成長がはじまるアジア諸国の何年か先を、先回りしたかのように走ってきた、と考えることで、これからの日本の成長を構想することも出来そうです。
潤沢な内需に支えられ、実に長い間、箱庭経済の中で、育ってきた日本ブランド群ではありますが、新しい旺盛なアジアの消費成長についていけず、かの地では通用しないようなブランドでは、早晩日本でも通用しなくなるという思いを強くしています。
今こそグローバルに強いブランドを創るためのブランド戦略を背骨にし、各論となる多様な文化と人種、国情の異なるアジア各国への進出戦略を立てる必要があるのではないか、と感じている次第です。
了
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閑話休題。
シンガポールのチャイニーズはとっても梅酒が好きです。
そして高級品は日本製品の寡占市場!なんです。
知らなかったでしょ。加藤もびっくりしました。そしてとりわけ驚かされたのが、その中国語での呼び名。
実はみんな梅酒のことをCHOYAと呼んでいるのです。アハハハ。
ね、まだまだ面白いことが出来そうだし、仕掛けられそうな気がしませんか。マーケターの諸氏各位。