創業時に3人共同代表、株式も等分…は極めて運営困難。|LEON連載 Vol.2再掲

エンジェル投資家には好都合なアジアのエアライン

バンコクから加藤順彦ポールです。

今日までの2泊、時間にして44時間ほどバンコクに滞在していました。

シンガポールからだとバンコクもそうなんですが、東南アジアの主要都市はだいたい1~4時間ほどで到着します。クアラルンプールが1時間、バンコクやジャカルタ、ホーチミンは2時間、マニラでも4時間です。

年中夏なので、PC込みでも7㎏以下の手荷物で3日分の衣類は入ります。僕は空港から車で15分弱のところに住んでいることもあり、出張に出ても、着陸30分後には自宅に着いているという塩梅です。

シンガポール空港は、世界で最も快適な空港の誉れも高く、この10年で何百の離着陸を過ごしていますが、24時間いつでも実に快適に過ごせます。

東南アジアは今回使っているエアアジアを筆頭にLCCのネットワークが充実しており、僕はリーズナブルな価格(バンコクは片道1万円程度)の席で、この4時間以内の街の間を年中飛び回っています。

起業のスタートアップがしてはいけないこと

2011年、震災の直後の頃、僕はフィリピンのセブに英会話のマンツーマン2週間合宿に参加していました。東南アジアを代表するビーチリゾートで有名なセブ島もシンガポールからLCCなら片道1万円弱、時間も4時間もあれば着く島で、いまも英会話レッスン合宿の事業がとても盛んな場所です。

僕は5月~6月の世界一周に向けて会話力を向上させようと駆け込んでいたのですが、セブに行ったのにはラングリッチの経営陣と会い、経営を協議するというもうひとつの目的がありました。

その、経営陣と初めて逢った席で

・中学校の地元の同級生と大学の一つ上の先輩と3人で起業。
・3人とも同じ株式比率で代表取締役。

という事実を知り、僕はそれなりに成功しつつあった3名に対し、いきなり“上から目線で全否定”しました。

そして、その後うまく行った場合にどのような悲劇が起こるのか、またうまく行かなかった場合、どのように崩れるのか、を語りました。(それこそ脊髄反射的に)その座組み・パターンは100%上手くいかない、と。そういう仲良しサークルな会社ではもう確実にどこかで崩れる、と。

その理由としては、誰がリーダーなのか、わからないのは組織ではない。そもそも議論が割れた場合、リーダーが決定する組織でないと、スピードがでない。スタートアップに3人代表などありえない

またふたつめの理由としては、成長することが前提の会社である場合、うまくいってもいかなくても事業資金が枯渇する場合がほとんど。そうなったときに誰が資金の調達の責任を取るのか。誰にその覚悟があるのかを確認できなければ、資金を出す側も出せない。そんなことを語ったのでした。

3人代表体制の起業に暗雲が……

彼らから加藤に資本と経営に参画してほしい、という連絡があったのは一週間後。9月に役員(Director)として経営参加してからは自分なりに最大の努力をして、会社を良い方向に持っていこう、と努めました。

まず当時の法人は創業者3名が33.3%ずつ持っていた!ので、いちどそれをガラポンして、新たにシンガポールに親会社を設置し、資本政策をゼロからやり直しました。そのうえでフィリピン法人、日本法人を傘下に。将来性を買ってくださったベンチャーキャピタルKLab Venturesさんに第三者割当を引き受けてもらいました。

競争力のカギになる教材が、世の中で市販されている教材だったので、それをオリジナルにすべくヒトメディアさんにも第三者割当を引き受けてもらいました。ほどなく新規参入を検討している大手企業からの買収オファーも受けるようになるほど、マーケティングに注力。

しかし残念ながら力及ばず、僕は予測していたはずのマネジメントの崩壊を結局防ぐことはできず……。

3人代表体制を維持しつつ事業の成長を続けることも叶いませんでした。2013年、退任した創業者たちの株式をヒトメディアさんに譲渡することで、事実上同社の管理下としてラングリッチは事業継続の方向を模索していく方向となったのです。

(写真は2022年6月25日撮影。創業時のラングリッチ代表の1人 占部友春氏と、ラングリッチのインターンを経て、後にYOYOを起業した深田洋輔氏と僕。YOYOでは僕は2012年10月の創業以来、取締役を務めています。)

新規事業はついに合併、子会社化を選択

その後も創業時の円高(ドル円75〜80円)ゆえに出ていた利益も円安一辺倒のなかもデフレ日本では値上げできず、かたやフィリピン人講師のフィーは景気爆発でしっかり上昇基調が続き、2015年9月、ヒトメディア代表の森田正康さんがDirectorでもあったEnglishCentral社との株式交換によって合併、100%子会社となることを選択して、現在に至っています。

セブを拠点にナマの英語でマンツーマン指導を行うSkype英会話サービスを行ってきたラングリッチはEnglishCentralが提供するトータルソリューションの一翼を担う役割となることで、英語を学習するお客様に対してより大きな成果をコミットメントすることができる、と考えたのです。実際、合併後は会員の皆さまに質の高い英語学習機会をご用意することが実現いたしました。

バトンを託したEnglishCentral 日本法人CEOの松村弘典さんは穏やかで朴訥としたムードなのですが、一方で学習者に対する姿勢はきわめて真摯であり、強い信念を感じる方です。必ずや同社の高い理想を実現してくれると思います。松村さんは年に1、2度はジョホールバル、シンガポールにお越しなのですが、そのたびに当地にてお食事などを共にして、経営や事業進捗について意見交換等をしています。

(写真は2023年1月13日撮影。EnglishCentral日本法人代表 松村弘典氏と、ラングリッチ旧体制時の執行役員で現在も加藤と共に株主を続ける上田浩史氏と僕。EnglishCentralは旧ラングリッチ時代より、加藤がExecutive Partnerを務めるアルビレックス新潟シンガポールのユニフォームスポンサーを継続しています。)

英会話事業の本社、ボストンの地を訪れて

同社の本社は米国マサチューセッツ州のボストンにあります。僕はこの7月に生まれて初めてボストンに5泊ほど滞在してきました。MITやハーバードなど世界の叡智が集う場所にふさわしい 美しく、閑静な、歴史ある街でした。

6年間にわたり役員を務めた僕でしたが、2017年6月に退任し、既に一株主となっていたので、敢えて同社を訪れませんでした。今は事業の発展を心から祈るばかりです。

あ! 読者の皆様、英語学習にはぜひEnglishCentralをご活用ください。

初出: LEON.jp 加藤ポールの「激動の投資家人生」 連載 Vol.2  (2018年11月6日)