豚インフルエンザとアジア経済への影響

2020年5月11日

先日のエントリで、伝染病のネタグリをしたばっかりなんだけど、あのときには想像だにしていなかった「豚インフルエンザ」が登場してしまいました。

4月30日、WHOが豚インフルエンザの警戒レベルを「フェーズ5」に引き上げたことを受けて、舛添厚生労働大臣は「パンデミック、世界的大流行になる確実性が極めて高くなった」との見通しを示しました。

また、厚労省の上田博三健康局長は、効果があるとされる治療薬のタミフルを既に3380万人分確保し、さらに830万人分を確保する予定と公表。やはり治療薬のリレンザは国で268万人分を備蓄済みで、都道府県でも133万人分を備蓄する予定と明らかにしました。(製薬会社って儲かるなー)

加藤の自宅から程近い、シンガポール国際空港もかなーり、ものものしくなりました。
27日から、すべての入国する全乗客に対し、サーモグラフィーによる体温測定をやっています。

シンガポール国際空港の2008年の利用客は約3800万人!!。

パンアジアの人と物の流れのハブだからこそ、神経質になっているわけですが、これには前回の轍は踏むまい、という強い意志も感じます。

シンガポールは、2002~03年の新型肺炎(SARS)流行で、東南アジア最多の感染者238人を出し、計り知れないダメージを受けました。(WHO公表数値)

SARSのアタックは、パンアジアのハブであったシンガポールの機能フリーズに繋がり、そして東南アジア全域の人と物の流れが止まったのです。

そして今回、アジアでは通貨の下落や、出張の自粛、現地社員の一時帰国など、経済への直接的な影響も出だしました。

なんか松屋さんが豚テキ定食を止めたよう(・・?、やりすぎのような気もします)ですけど、日本の食卓への影響を考えると、この松屋さんだけじゃなくて、北米とメキシコからの日本への豚肉輸入は全体の7割に達しています。
ここで輸入が大きく落ち込めば、影響は相当大きくなるはず。

先日、バンコクに行った際に、ある日本食レストランの社長から
「正直言って97年のアジア通貨危機と02年のSARSじゃ、市場の冷え方は格段にSARSのほうが上だった」というコメントを貰いました。

データだけを見れば、アジア通貨危機のほうが影響の規模は大きかったようなんですけど、川下産業へのボディブローは効いた感があったってことなんでしょう。

一昨日は日本の金融機関の香港支店長がオフィスにお越しになっていたんですが、そこで「中国の経済・政治は磐石だよ。もう既に去年10月の経済危機なんか峠を乗り越えてるよ。でも豚インフルは正直かなり怖い。中国でこれが流行っちゃうとお手上げのはず」とおっしゃっていました。

なんとかうまく伝染の根絶が進めばいいのですが。Googleマップで感染状況をLIVEしてくれる人も現れてます。

それにしても、せっかく薄日が射してきている世界経済への影響が心配です。 まぁ今のところ、株価はむしろNYも東京も全面高なんですけどね。

世界銀行は世界金融危機直前の昨年10月、鳥インフルエンザの大流行による経済的影響を弾いています。

そのときの試算によれば、流行地域への旅行、外食、観光、公共交通機関など幅広い需要減少を通じて、世界経済全体のコストは最大3兆ドルに上り、世界の国内総生産(GDP)を4・8%押し下げるとみていました。まぁ1700万人も死ぬなんて、考えがたいですけど。

しかし、ここに来てこの規模の追い討ちとなってしまうと、壊滅的打撃になるのではないでしょうか。

さて、今回の震源地はメキシコなんですが、ここ数日、その公表がかなり遅れたらしい、という記事をよく目にします。

本当はどの程度遅れたのでしょうかね。さっき、こんな記事を眼にしました。あるブロガーの方がBBC News の投書欄に寄せられた豚インフルエンザに関するメキシコの医師の投書を翻訳して紹介しています。これだけを読むと、かなり怖い。

でも
今にして思えば、リストラの方便だと、かなり揶揄された今年2月のパナソニックの駐在員家族帰国令のほうが、凄すぎで背筋寒いか。