世界競争力報告 と ビジネスの環境

2020年5月11日

先日、世界経済フォーラムが、毎年発表している世界競争力報告の2009-2010年の順位が発表されました。

世界経済フォーラム(WEF:World Economic Forum)とは、世界の約1000社の企業が参加する非営利の国際機関です。本部はスイスのジュネーブにあります。
よく新聞とかで報道されている毎年一月下旬に行われるダボス会議とは、年次総会の日本での呼び名です。(ダボスはジュネーブ近郊にある観光地だそうです)

ビル・ゲイツさんから温家宝さんまで。
この総会には各国を代表する企業の経営者だけでなくジャーナリスト、政治家、学者などが多数参加しています。日本からも日銀、NTT、日経、トヨタなど30数社参加し、世界を取り巻く主要な社会的・経済的問題に関して議論を行い、諸課題を共有する場になっています。
会議の内容は多くのジャーナリスト報道機関によって世界中に発信されています。今年の1月の会議には約90カ国から2500人以上が参加したそうです。

さて、その世界経済フォーラムが発表している世界男女格差報告などいくつかの指標のなかでも、最も注目度が高い指標が、冒頭の世界競争力報告 (Global Competitiveness Report) です。

経済指標や会議に参加している経営者からのアンケート回答などに基づき、調査の対象となっている133カ国・地域を評価項目ごとに競争力を順位付けし、総合の順位を出しています。

ここでは、日本の総合順位にフォーカスして
汚職、犯罪、労働者の質といった要因が低い一方で、税金や政府の官僚機構について相対的に阻害度が高くなっています。(略)
133カ国のうち、財政赤字の132位(実質最下位)、農政コストの128位といったあたりが競争力を阻害しているとの結果が示されています。』 と紹介されてます。

ちなみに順位の推移としては、
・’06年 5位 →’07年 8位 →’08年 9位 →’09年 8位 となっています。いずれも06年以降の財政の超悪化と農政コスト高すぎが低い主要因ですね。

ついでにシンガポールの順位もご紹介します。
・’06年 8位 →’07年 7位 →’08年 5位 →’09年 3位 です。09年は遂にダボスの順位でもアジア勢として初めてベスト3に喰いこみました。

(実はもうひとつスイスのビジネススクールIMD(経営開発国際研究所)も毎年5月中旬に世界競争力ランキングを発表しています。こちらでも09年 3位です。こちらでは日本は5ランクアップの17位でした)

さて、シンガポールの競争力において、国際的な評価が高いのは何故なんでしょう。
もちろん、いろいろと要因はあるのですけど、加藤自身がいちばん大きいなと思っているのは『ビジネス環境』だと思っています。もちろん世界のビジネスマン・企業にとって、です。

それを客観的に示している指標があります。
まず
世界銀行と国際金融公社(IFC)が毎年発表している ビジネスのしやすさを183の国と地域を対象に調査した『ビジネス環境の現状』という年次報告です。
これでシンガポールが4年連続で1位となっています。日本は昨年に比べて2ダウンの15位です。

具体的に僕にこんなことがありました。

昨年秋、弊社PanAsia Partners PTE,LTDが、シンガポールに来て3ヶ月経った頃、(日本でいう経済産業省にあたる)EDB(Economic Development Board)の官僚さんからメールと電話でアポイントの要請がありました。会社に来たい!というのです

『えーー。まだ移住したばっかだし運悪いな。なんか悪いでもことしたかな・・・』
と思いつつ恐る恐るアポイントをとり、当日オフィスで小さくなってお待ちしていたところ、、、アポ時間になって登場したのは、見た感じ、まだ25,6才のうら若きお嬢さん。

お越しになり、いきなり彼女が言い出したことは
『EDBの××です。私は貴方の産業の担当です。なにか日本から来て起業されて、不自由に感じていたり、困っていることはありませんか?』
『加藤さんが紹介してほしい企業や、プロフェッショナルがいるならサポートします』

どっしぇー!!。
僕は上京して東京で広告会社を作って以来16年の間に、何度か税務署や労働基準監督局の人に虐められたり、お役人から呼び出され意味不明の質問攻めやイヤミを言われたことはありましたが、手助けしたい、といわれたことは一度もありませんでした。

シンガポールの官僚は、みんな若くして権限も予算もある、ということが後にわかりました。
30前後で管理職なのです。優秀な方は40くらいになると在星の欧米企業のアジア地域本社などからヘッドハントされ早期退官→CEOをやっている!というのが、キャリアパスなのだそうです。

日本の中央官僚が民間企業に『何か困っていることはないですか』と訪問するなんて、少なくとも今世紀中はないでしょう。

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もうひとつ、これはビジネスということではないのですけど
世界開発センター(CGD)という米国シンクタンクが発表している『移民統計の充実度』です。これは世界の48の国・地域を対象に調査しています。

この調査で日本はエジプトやエチオピアなど4カ国とともに最下位となっています。
CGDは昨年11月
時点で、次回国勢調査で本籍国や以前の居住国など4項目を尋ねる予定かどうかを調べ、日本は7段階のうち最低ランクの「F」に格付けられました。「C」となった中国や韓国より下でした。
以前からこのブログでも書いてきましたが、加藤は少子高齢化が2次曲線的に進行している日本が、この先に再生するにはシンガポールのような明確に基準を持った移民制度の導入が不可欠だと思っています。
しかし、ここにも書かれている通り、現状は如何に日本の行政が移民受け入れについて意識が低いかが、窺えます。

実は
この調査報告には激しくしんどい関連調査結果もあります。センタクというネット投票の調査サイトが、この調査報告についてのアンケートをとっています。
有効投票数が少なすぎるので一概にはいえないのですが・・・

これらを観ると、日本という国は世界メジャー企業がアジア拠点を置くには向いていない、ということが考えられます。

そして日本企業も、アジア全体を市場としてビジネスを展開する本拠地を、日本に置くべきではないのではないか、ということも考えるべきではないでしょうか。